- 2016年11月9日

アジア太平洋地域におけるプログラマティック推進のカギは、管理性と透明性

プログラマティック・テクノロジーは、広告主などのメディア購入側にキャンペーン・パフォーマンスを向上させるための素晴らしい機会を提供していますが、本格的にプログラマティックを浸透させるには、広告主の投資環境における管理性と透明性が必要です。

アジア太平洋地域におけるプログラマティック支出は、毎年35%の成長が見込まれており、2019年には70億USドルに達すると予測されています。これは、2019年までに、インドネシア、ベトナム、韓国などの市場規模が毎年2倍になるという予測を踏まえたものです¹。アジア太平洋地域の意思決定者がプログラマティックへの移行を加速する背景には何があるのでしょうか?プログラマティック購入の最も大きなメリットとして「コンテキスト(文脈)・ターゲティングが優れている」が非常に重要と答えた数が全体の半数を超え、「素早く実施できる」(48%)、「リアルタイムな最適化」(46%)が次に続きます²。

しかし、この結果に喜んでばかりはいられないのが現状です。マーケターは積極的にテクノロジーを利用しているものの、さらに広範囲に展開するには大きな障害があります。プログラマティックを利用しない理由として、時間的な問題の他に、「技術的に複雑」(50%が回答)とアジア太平洋地域の意思決定者は答えています。また、「協力を期待できる代理店パートナーがいない」「社内にそのスキルがない」(いずれも40%)という点もネックになっているようです²。

問題点の「トレードオフ」
上記に挙げたプログラマティックのメリットとデメリットは、突き詰めると単純なトレードオフに転換できます。プログラマティックが登場するまで、広告を掲載する場所はある程度広告主自身がコントロールできましたが、同時に無駄が多く、非効率的でした。あるサイトでの広告掲載を購入した場合、広告主が望むターゲットだけでなく、そのサイトにアクセスする全ユーザーに届くからです。プログラマティックは、無駄のない、細分化されたオーディエンス・ターゲティングを実現し、新時代の幕を開けましたが、その代償として管理性と透明性を失ったのです。言い換えれば、効率性が向上することで、管理性が低下したのです。

しかし、この二つは、どちらかが上がれば必ずもう一つが下がる、いわゆる「シーソー」の関係ではありません。効率性と管理性を同時に最大限に向上させるカギは、広告掲載の入札を行う前に設定するメカニズムにあるのです。では、どう対処すれば良いのでしょうか?

管理するとはブランドを保護すること
管理性と透明性を失うことはさまざまな理由で不安な要素ですが、不適切なコンテキストで広告が掲載された場合、広告主のイメージが損なわれる、という懸念に集約されます。しかし、正しい場所にパイプを構築すれば、プログラマティックであっても、こうしたリスクは軽減させることができます。

まず、広告主に必要なのは、単にポルノ、暴力、違法行為、テロリストに関連するウェブサイトなどの明らかに不適切な環境を避けることが、すなわちブランド・セーフティーではないと認識することです。

つまり、ブランド・セーフティーとは、特定の競合の名前やブランドにとって不利な記事など、デメリットの高いトピックやコンテキストを避けるということなのです。たとえば、ピーナッツバターのブランドなら、ナッツアレルギーの子どもが増えているという記事の周囲に広告を載せるのは避けたいし、クルーズ船の運航会社が海難事故の記事の隣に広告を載せたくはないのは当然のことです。

これらを認識したなら、現在連携している広告配信パートナーがカスタマイズ性の高い、強力なキャンペーン保護ツールを導入しているかどうかを確認する必要があります。たとえば、コムスコアのクライアントは広告が入札段階になる前に、3種類の「年齢制限」や17種類のブランド・セーフティーに関する「フィルター」を設定することができます。また、こうしたツールは、ビューアブルな環境を最大化させノンヒューマン・トラフィックやアドフラウドへの配信を最小限に抑えるツールと併せて使用することも重要です。

コンテキストがすべてを支配する
ナッツアレルギーや海難事故の記事は、ブランドにとって不利となる避けるべきコンテキストの例でしたが、ブランド・セーフティーの問題をクリアしたならば、次は成功率を高めるコンテキストに的を絞って広告を展開する必要があります。業界では前者(広告の検証)に重点を置きすぎて、後者(広告の関連度)については軽視される傾向にありました。

効果的なプログラマティック・テクノロジーは、質の高いコンテンツとオーディエンスをリアルタイムで見つける機能を備えているのが特長です。パートナー企業には、ドメイン、サイト、ページ、あるいはページエレメントのレベルで、この「コンテキスト・カテゴライズ」を実行する能力が求められます。これには、ダイナミックに更新される数十万ものトピックカテゴリーが必要です。

新しい長距離走用シューズのブランド認知度を上げたいスポーツブランドを例に挙げてみましょう。ここでのコツは、コンテキスト・カテゴリー(「ランニング」など全般的な関連トピックの検索に最適)とキーワードターゲティング(「マラソン」など指定した単語の完全一致検索に最適)の両方の優れた要素を組み合わせることです。

「ランニング」カテゴリーを選択すると、スポーツブランドの広告は「ランニング」に関連するサイトに掲載されます。しかし、掲載先の記事は筋肉増強に関する内容で、マラソン大会に向けてトレーニングをするユーザーの関心を引くものではありません。「マラソン」という単語を含む在庫をターゲット化するためにカスタム・キーワードを選択しますが、この設定では、偶然マラソンを走った犬の記事が出てきてしまいます。コンテキスト・カテゴリーとキーワードターゲティングを両方使用した場合のみ、必要としていた関連度の高いコンテンツ、つまり、ランニングに関連するサイトのマラソンに関する記事にたどり着けるのです。

広告が適切な環境で表示されるには検証が必要ですが、キャンペーン、そして商品に関心を持つであろう消費者にリーチするには、関連度が最も重要な要素であることに注意してください。

マラソンランナーに対する新作ランニングシューズの認知度向上を図りたいアスリートブランドの場合

「ランニング」のカテゴリーを選択:

ランニングに関連度が高いが、マラソンランナー向けのコンテンツであるとは限らない

「マラソン」をカスタムターゲットに設定:
マラソンのコンテンツにマッチするが、ランナーにリーチするとは限らない

両方を組み合わせる:
ランニングシューズのキャンペーンに最適な在庫

¹出典:MAGNA GLOBAL, September 2015 Programmatic Forecast
²出典:A commissioned study conducted by Forrester Consulting on behalf of MediaMath, February 2016, “Programmatic: The Shifting Paradigm of Digital Marketing”